No.71 実は私、小説も書いてます❗その6 

 7月文月になりました。私のワクチン接種日が決まりました❗世間ではワクチンが足りなくなって、予約の打ち消し・・とか、「国を信じてごめんなさい。」と首長が住民に謝るとか、ワクチン接種は全く上手くいっているとは言えません。

 もちろん希望者ですが、医療従事者の接種が完了し、65歳以上の高齢者の接種が完了し、介護従事者、学校関係者の接種も進んでいるはずです。

 企業内接種などもどんどん進んでいると思っていました。なのに、なぜこんなことが今頃ニュースになるんでしょう・・。

 どこまでもアンバランスで、無計画。リーダーシップがとれてなくて、何もかも遅い・・。そんな風に思えてなりません。言いっぱなしで悪いですけど・・。

 とにかく世間の、接種したいのにできない状況の肩方には申し訳ないのですが、私はこの週末に大規模接種会場で接種を済ませてきます。

 その様子は、また次回のブログで紹介させて頂きます🙋。

 

 さて、今回も、私の小説「刹那~襟子」の世界で、つかの間の非日常を楽しんで頂けたらと思います。

 「刹那~襟子」 第二章 ホーム 

前回の続きからです。

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 ホームにアナウンスが鳴り響いた。

「特許電車が通過します。黄色のラインまで下がってお気をつけください。」

 語尾をわずかに上げた、

いつも通りの軽快なアナウンスが聞こえ、通過のため速度を落とさない特急電車の振動と風圧が襟子の前髪をかすかに揺らし始めた。・・その時だった。

 今の今までベンチに座ってうつむいていた年配のあの男性が、恐ろしく機敏な動作で立ち上がり、目にも留まらぬ速さでホームを突っ切って駆け出し、線路に向かって飛び込んだのだった。

「あぁっ!」という、傍にいた若い男性の声を聞いたような気がしたが、一瞬遅れて駆け出したその男性は、今度は男性の服の袖しか掴めなかった。

 ガツン!という、重いものが金属に当たったような、妙に存在感のある音を残して、後は特急電車が急ブレーキをかける、胃の腑に響くような擦過音がホーム一面に響き渡った。

 線路と車輪が摩擦して飛ぶ火花を、襟子は見たような気がした。その車輪からの煙とともに焦げ臭いような匂いがホームに立ち込めた。

 と同時に、襟子はその匂いの中に、確かに生臭い大量の匂いを嗅ぎとったのだった。

 あの若い男性はすぐ傍にいた。つまり、線路に飛び込んだ男性は、襟子のすぐ傍から身を投げたのだ…。

「キャア―!」「うわぁー!」

男性の女性の、ありとあらゆる人々の悲鳴が響いた。襟子のすぐ傍にいたあの男性は、飛び込んだ男性の服だけを掴んだように思ったが、そうではなかった。解かんだ腑には中身が残っていた。失われたのは、その頭部だけだった。

 男性は、頭部がもぎ取られた頸動脈からの大量の血を、それこそ頭から被っていたのだ。全身が血だらけだった。顔も手も胸も足元まで、着ていた服は真っ赤にしか見えなかった。文字通り、bucketいっぱいの水を被ったように、彼は全身におびただしい血液を浴びていたのだ。

🌆🌇🌉🌃🌉

 人々はそれに気づいて遠巻きに後ずさったが、襟子は動くことができなかった…。あわただしく駅員が数名駆けてきて、頭部のない死体をシートでくるみ運び出した。

 他の駅員たちは、血だらけの男性に毛布を被せ、駅事務所にでも連れていくのだろうか、小声で声をかけながら、よろよろと足を引きずる彼を支えつつ去って行った。

 また何人かは、ホームで勢いよく水を流しながらホームに溜まった血の跡をデッキブラシで洗い出した。

 駅員の一人が呆然と立ちすくむ襟子の傍にやって来て声をかける。

「大丈夫ですか?顔と服に血が・・。」

その時初めて、襟子は自分も返り血を浴びていることに気づいたのだった。

 駅員は襟子をベンチに(さっきの二人が座っていたのとは別の)座らせ、真っ白いタオルを差し出した。駅員はタオルをどこかで捨てるよう襟子に言い残し、気遣いながらも慌ただしく駅事務所に走っていった。

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 襟子は震えが止まらなかった。タオルを持つ手が心もとないほど揺れていた。そっと顔に当てたが、かすかに赤い斑点が付いただけで、その血の量に少し安堵した。

 服や鞄も見てみたが、気になるような血の痕跡は見当たらなかった。こんな時はアドレナリンが回っているのか、妙に頭は冴え渡っていた。

(とにかく早く家に帰ろう。家に帰ってから考えよう・・。)

 何を考えようとしているのかさえ自分ではわからなかったが、襟子はスマホを取り出して夫に電話で簡単に連絡し、今いる駅までの迎えを頼んだ。

 どうしても、再度並んで電車に乗る勇気は出なかったのである。その時には、ホームは何事もなかったかのように、元の喧騒を取り戻していた。

 襟子は、死んだ男性と話し込んでいた若い男性のことを考えた。毛布にくるまれた彼の顔は色を失っていた。別人のようになってうろたえ、よろよろと去って行った彼のことを考えていた。

 一瞬のことだった。あの刹那、彼が掴んだ服の頼りなさを、彼はいつ忘れることができるのだろう。そして、もしも、もっと話ができていたら、もしも、もっと早く走り出していたら、もしも、もっと強くあの男性を引っ張ることができていたなら、もしも、もしも・・。

 そうやって、責めなくてもいい自分を責め続けるのだろうか。頭から被った大量の血の匂いを、耳に残った頭が飛ぶ瞬間のあの音を、手に残ったあの振動を、彼はいつか本当に忘れることができるのだろうか・・。

🌆🌆🌃🌃🌃

 帰宅した襟子は、慎重に服を脱ぎ、飛んだ血しぶきをわずかでも見つけると、丁寧に強力な洗剤で手洗いし、洗濯機に入れた。鞄にも靴にも、目に見える痕跡はなかったが何度も何度もアルコールで拭いた。

 それが終わると襟子はシャワーを浴びにバスルームに入る。そして勢いよく目を閉じたまま頭から水着を被った。その時だった。

💦💦💦💦💦

 

 今日はここまでにしたいと思います。間もなく第二章が終わって第三章「叙情的恋愛」に続きます。また別の非日常へともに行きましょう(笑)😊。

芹沢マリリンでした🎵