No.73 実は私、小説も書いてます❗その8

 東京に四度目の緊急事態宣言が出ました。飲食店の落胆はいかがばかりかと推察せれます。そんな時に、コロナ対策の中心人物の暴言❗えっ👀⁉️と思っていたら、瞬く間に撤回❗

 もうどうしていいかわからなくなっているのでしょうか💦。何が大切か、軸がぶれているのでしょうか・・。もともとの軸が私たちとは異なっているのでしょうか・・。

 おまけにJOCのバッハ会長は「東京の緊急事態宣言はオリンピックに何の影響があるのか?」と今頃聞く始末・・。耳を疑いますね😓。

 今年の夏、そして秋、冬は、いったいどんな日々になるのでしょう・・。ワクチンも相変わらず、なかなか行き渡らないし・・。

 アスリートを応援したいのは山々ですが、複雑な思いは拭いされません💦。

 

☔️☔️☁️☁️🌈

 今回も、私の小説「刹那~襟子~」第三章『叙情的恋愛』の続きをお楽しみください😄。ようこそ、非日常の世界へ・・。

 

  第三章  叙情的恋愛  続き

 繭子は不倫していた。もう二年目に入っている。相手は取引先の男性で既婚者らしい。繭子も同じく既婚者で、小学生と幼稚園児の二人の子どもがいる。

 世間から見たら決して許されるはずの無い、しかしまた逆によくある話でもあった。その繭子の許されない恋愛が、こんな結末を迎えようとは・・。一年前の襟子にとっては、全く想定外のことであった。

 

 勤務時間が過ぎ、社の玄関で落ち合った二人は、襟子の帰宅に使う最寄り駅に向かって歩き、途中の小さなカフェに入った。

 明るすぎず、暗すぎず、中途半端な時間で客も少なく、それほど小声にしなくても充分に気兼ねなく話をすることができた。

「襟子さん、私、やっぱり間違ってますよね・・。わかってるんです。」

繭子は、ぽつぽつと、そして途中からは饒舌に一気に自らの不倫について語りだした。

「彼を一目見たとき、雷に打たれたみたいだったんです。この歳で一目惚れって、そんなこと信じられます?一瞬で好きになってしまったんです・・。」

 彼との出会いを、繭子はそう表現した。それはそれは爽やかな、こぼれるような笑顔で、彼は名刺を差し出したそうだ。

 相手も初対面のその時の印象が忘れられなかったと、付き合いだしてから聞いたらしい。そのことを、嬉しそうに彼女はまたこぼれんばかりの笑顔で語った。

 それが二年前。彼らはすぐにそういう関係になったわけではなかった。互いの年齢から考えて、既婚者で子どももいるであろうことが当たり前に予想されたからだ。

 彼らは、単なる恋愛体質だったわけではなかった。何度かの仕事上の取引の場面を経て、それとなく互いの家庭について、ぎこちなく情報を交換しあっていたことを、彼女はまるで二十代の若い女性のように語るのだった。

 襟子は、時折うなづいたり、微笑んだりしながら、相づちを打つ以外は黙って彼女を見つめて、テーブルの上で組んだ手の指に顎を載せて、じっと耳を傾けていた。

「襟子さんなら、世間体とか道徳観念とかを振り回さず、話を聞いてくれるんじゃないかと思ったの・・。」

と、彼女は言った。

 不倫をしている女は、それほどに孤独なのだ。目の前にいる、時折瞳をくるりと上に向けてほほを赤らめて語る女性が四十を過ぎた女性であること、そしてそれを聴いている自分が五十目前のまさしく中年女性であることなど忘れ、互いに何十年も前の学生時代に戻ったように感じたのも、しかしそこまでだった。

 

 襟子には、どうにも釈然としないことがあったのだ。繭子は、彼との出会いからしばらくの間の様子に関しては、まるで若者のように嬉々として語っていたが付き合いはじめてからの様子を語る頃には、別人のようにしたり顔になってしまった(ように襟子には感じられた)。不倫は、やはり普通の恋愛ではないのだ。

 付き合いはじめて1年がたった彼女は、言うならばドライに割りきった不倫をしていた。いや、その状態に行き着いた、行き着かねばならなかった・・と言うべきだろうか(その時はそう思えたのだが)。

 襟子は、不倫という許されない恋愛は、その制約があまりにも大きいがゆえに、もっと苦しいものだと思っていた。

 逢いたい時に逢えないのが不倫だ。二人でいるのがどんなに幸せでも誰にも言えず、誰にも見られてはならない、秘密にするしかないのが不倫である。

 逢えない日が続くと淋しくて眠れなくなるような、逢えない時の相手の様子を詮索して、自分で自分の首を絞めるような、そんな切実さはその時の彼女の様子からは微塵も感じられなかった。彼女は言った。

「私たちは、お互い、いわば家庭と恋愛を両立させて上手くやっているの。彼と逢えた日は、ダンナさんにもうんと優しくするわ。彼も私と逢った日は、帰って必ず奥さんに前よりも優しくするって言ってたわ。

ひと月に一回でいいの。それまでの三十日は、その日のためにあると思うようにしてる。いつも逢いたい逢いたいって思ってると辛いから。そんなことは考えない。

電話は週に一回決まった曜日の決まった時間に数分間だけして、普段はメールもしない。もしも電話のことを聞かれても、週に一回ぐらいなんとでも言えるわ。

逢えた時に次の日を決めるから心配ないの。でも、その約束の日は、もう夢中で、何処にも行かず食事もせずに抱き合うわ。

それでいいの。そんな関係なら、・・もしかしたらずっと続けていけるかもしれないもの・・。」

 繭子は襟子に・・というより、自分自身に言い聞かせるように、それでもぎこちない微笑みを絶やさず、一言一言噛みしめるように語ったのだった。

 

 繭子は決して相手に物をねだったり、旅行を望んだり、手を繋いで街を歩きたがるような愛人体質の女ではなかった。

 特別な美人でもなく派手な方でもない。しかし、与えられた仕事は確実にこなし、きちんと責任を果たす、そういう意味では充分魅力的なキャリアウーマンだ。

 もしも部下のせいで仕事に支障が出たりミスが起こっても、部下を説諭はするが、パワハラをしたり陰湿ないじめをすることは皆無だった。

 責任は全て自分がとり、上昇志向はあったと思うが爽やかなほどにこだわらない。仕事ができるのに、幾度か当然の昇進や抜擢が流れても不満を口にすることはなく、自分のやるべきことをきちんとやり通していた。

 そういう彼女を知っているだけに、襟子は彼女のしていることに何も口を挟むことができなかった。世間一般の道理や使い古された常識論をかざす勇気はなく、またその必要も感じていなかった。

 

 二人が繭子の言う、今のような関係を維持するようになるまで、きっと様々な危機や軋轢があったことだろう。きっと何度も電話し、声を聞きたいと思ったにちがいない。

 声を聞けないなら、せめてメールを送りたいと思うのが当然だ。彼とを繋ぐ魔法の小箱のようなスマートフォンを、1日に何度も何度も覗いたことだろう。

 メールに返信があれば驚喜し、なければ落胆し、決して絶対安全とは言えないスマホに再度送るべきか送らずにいるべきか、何度も何度も思い悩んだことだろう。

 逢えたら逢えたで、必ず別れる時間が来る。互いに待っている人がいる身である。帰る前に身支度を整え、右と左に別れるとき、最初からすっきり割りきれるような思いであったはずがない。

 二人とも大人なゆえに泣いたり喚いたりはしなかっただろうが、笑顔で手を振れるようになるまでは身を切られるような思いであったに違いない。

「彼と逢っている時間より、待っている時間の方がずっと幸せ・・。」

と語る繭子の表情に、きっと何度もあったであろう彼との修羅場が、かすかに影を落とすのを襟子は見逃さなかった・・。

 

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 今回は、この辺りにさせていただきます。また次も読んでくださいね。皆様、どうかご自愛ください🍀

芹沢マリリンでした🎵