No.81実は私、小説も書いてます❗その16

 最近、家族が総合病院で検査をすることになり、改めて考えたことがあります。幸い、その病院は、医療逼迫しているわけではなかったようで、すぐに診察も検査もして貰えました。

 しかし私はその時思いました。もしも、救急車を呼ぶような状態で、かつ緊急に検査したり手術したりしなければならないような症状で、医療が逼迫していたなら・・想像しただけでも恐ろしいです💦💦。

 まず、救急車がすぐ来てくれるだろうか?コロナと関係なくても、すぐに受け入れてくれる病院が見つかるだろうか?手術をしなければならなくなった時、すぐにしてくれるだろうか?・・そんなことを本当に考えてしまいました💦💦。

 運良く受け入れてくれる病院が決まっても、まずコロナに感染していないかどうか調べるはずです。一刻を争うような場合、間に合うのだろうか?入院した場合、病院には失礼なことですが、院内感染しないかも心配です。

 今まで、心配したこともなかったようなことが、命の現場で問われるようになるかもしれません。ニュースや新聞でさんざん言われてきた「医療現場の逼迫」が、いかに恐ろしいものであるか、今回骨身に沁みました。

 そして、このコロナ禍の状況を、一刻も早く改善していくことが急務だと心から思いました。

 文明国日本にいながら、こんな一般的な状況においても、今までになかったような不安を抱え込むことになるとは、あまり想像していませんでした😥。

 歳を取れば体のあちこちに不調がくるのは当たり前です。若い人でも、交通事故や不慮の怪我を負うことはあるかもしれません。

 コロナ禍になってから、今まで以上に、「風邪を引かないようにしよう」「運転には充分気をつけて、事故に遭わないように注意しよう」とは、心がけてきました。

 今日のニュースでは、「自分はコロナにかからない」と思っている人がアンケートの半数以上だった言っていました。私は「誰がいつかかってもおかしくない状態」だと思っているので、「かかるかもしれない」に一票です。

 どんなに気を付けていても、100%かからない保証はないと思っています。だからこそ、日々ニュースで流れる新規感染者数の数字に『慣れてはいけない』と自分を戒めています。数字は今こそ危機的状態だと訴えているのですから・・。

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 それでは今回も、私の小説「刹那~襟子」の続きをお楽しみ頂ければ嬉しいです🙋。

 

  「刹那~襟子」 第四章 『濃厚接触』続き

 彼女には、もう一つ気がかりなことがあった。コロナ禍で子どもたちの安らぎの場であるはずの家庭も、今までにない困難に直面していたのである。

 保護者の仕事がうまくいかなかったり休業を余儀なくされていたりすると、どうしても家庭の空気がささくれてくる。

 そういう中では、悲しいかなDVや虐待が増えることがあるのだ。保護者に余裕がなくなってくるからである。そして犠牲になるのは多くの場合、母親や子どもたちだ。

 彼女は、どうしても連絡の取れない1人の児童が気になっていた。電話をすれば母親が出るのだが、本人に代わってほしいと頼んでも、何かと理由を避けるためですつけて代わろうとしない。

 本来、時節柄、家庭訪問は自粛するよう言われているのだが、彼女はどうにも我慢ができなかった。玄関の外に待たされ、家の中に入れてくれないことは予想できた。

 追い返されるならそれでもいい。もしも今日そうなったら通告しよう。児童相談所に虐待疑いで通告するのだ。

 既に管理職の許可は取ってある。躊躇している場合ではない。一刻を争う状況かもしれないのだ。彼女は、子どもの無事を祈ってこぶしを握りしめるのだった。

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 停留所でバスは停まり、若い学生や勤め人らしき人たちは降りて、代わりに一人の黒っぽいシャツを着た若い男性が乗り込んできた。

 彼はマスクをしていなかった。一瞬その姿を見て、残りの乗客の間に先ほどとは異なる緊張感が走ったのを襟子は感じた。

 その男性は、運転席のすぐ後ろの、一番前の席に座った。依然として沈黙状態のバスの中に、彼の咳が響いたのが5分後だった。襟子は、前に座っている全ての乗客の体が、ぴくんと動くのを見た。たぶん自分も。

 

 若者の名は菅野大輔二十七歳。有名飲食チェーン店の店長に、この春抜擢されたばかりだった。高校を卒業して調理師の専門学校で2年間学び、卒業後市内の飲食店に修行兼アルバイトとして勤めて3年。

 その真面目な働きぶりを見込まれて、正式に従業員として勤めていたが、自分の店を持ちたいという夢をいつか実現したいとチャンスをうかがっていた。

 駅前の再開発とともに、全国的に有名な飲食チェーン店がオープンして、従業員を募集しているのを知って一念発起。

 それまで働いていた飲食店の親方には残念がられたが夢を実現させたいという若者の思いに理解を示し、円満退職に同意した。そして、新入社員として再び一から研修を受けてスタートしたのである。

 それまでの経験の積み重ねがあるため彼は同年代の他の従業員のリーダーとなり、とうとう2年後の今年春、チェーン店ではあるが店長に抜擢されることになった。

 運もあっただろうが、それまでの彼が一つの目標に向かって精一杯努力して手に入れた幸運だったのだ。大会社ゆえに将来の見通しもついて、かねたから彼の苦労を何年も一緒に背負ってきた同棲中の彼女と、晴れて結婚も考えていた。

 ・・ところがである。春先からその片鱗を見せ始めていたコロナ禍が、緊急事態宣言発令とともに飲食業の世界に襲いかかったのだ。

 彼の店長就任は白紙に戻った。それだけでなく、彼の勤めていた店は休業に追い込まれたのだった。古くから地域に根差した他の店舗の存続のために、開業したばかりの彼の店は整理対象になり、一時(いつまでかわからない無期限の)閉店の憂き目に遭ってしまったのである。

 チェーン店ゆえに会社の決定は絶対だった。彼が次期店長として先頭に立って推し進めたコロナ対策の消毒作業も、ソーシャルディスタンスを取った店の改装も、テイクアウトの新メニューの開発も、全て会社からのメール一通で徒労に終わったのである。

 会社としても、多くの店舗を切り捨てるのは苦渋の決断であった。百年以上続く老舗の店が、次々と閉業に追い込まれていくのが、その時の実状だったのである。

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 彼には、今は白紙になった次期店長としての責任だけが残った。解雇される従業員の再就職先を探し、アルバイトやパート従業員には最後通告をする精神的にきつい仕事が与えられた。

 退職金をめぐる組合との交渉も、彼が矢面に立たされた。それでも彼は精一杯その務めを果たそうと、身を粉にして働いた。

 しかし、それらよりももっと彼の心身にダメージを与えたのは、結婚を約束した彼女との関係だった。彼女のお腹には間もなく3ヶ月になる赤ん坊が育っていた。

 彼女は彼に、静かにしかしはっきりとこう語った。

「こんなご時世だから、どうせ結婚式もできないし、今のまま籍を入れるだけでいい。赤ちゃんも、病院に行くこと自体が大変だから諦めてもいい。

 子どもができたら、自分が働けないからあなたを支えることもできないし、あなたの次の仕事が決まるまで我慢しましょう。」と。

 彼は彼女から妊娠を告げられた日の明くる日の早朝、解雇を宣告されたのである。

 喜びで飛び上がらんばかりに彼女と抱き合った日は、(彼女のお腹が目立たないうちにすぐにでも結婚式を挙げよう!そして、年が明けたら3人での新しい生活を始めるんだ!)

・・と、明るい将来のイメージしか浮かばなかった。たった数時間でその思いは深い谷底へと突き落とされたのである。

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 その日から残務処理の辛い日々が始まった。そして、瞬く間に彼女と最後の決断をする期限が来たのである。

 彼は、自分の気持ちがはっきりと決まらないまま、彼女のもとに向かっていた。彼はなんとかなると思った。彼女と二人がんばれば生きていけると思った。しかし、そのことに確かな根拠がないことは明らかだった。

 その苦労を理解している彼女は、重荷になりたくないと言う。自分も一緒にがんばりたいと言う。どうしたらいいんだ。後で後悔したくない。いや、後悔せずにいられるわけがない。だけど・・。

 堂々巡りのまま、糸口の見つからない(そのこと自体が彼は男として情けなくてたまらないのだが)ループに絡まれ、身動きができずにいたのである。

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 彼の咳は一端収まったが、それから数分後、立て続けに出だした。肺の奥から絞り出すような、気管の壁にへばりついた異物をこそげ落とすような苦しげな咳は、彼が自らの手や服の袖で口を押さえても、執拗に収まる様子を見せなかった。

 冷や汗を流しているかのように(襟子からは見えないが)うろたえている彼の後ろで、他の乗客はそれ以上に冷静さを欠いていった。

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 今回は、ここまでにさせていただきます。様々な人生が交錯し合うバスの中で、とうとう事件が起こってしまいます。

 私がこれを書いたのは一年半前ですが、コロナ禍の社会の様相は、ほとんど変わっていないのに驚き、困惑しています。寧ろ、新規感染者数は、過去最多を記録し続けています。

 私たちは、何を間違ったのでしょう。どこかに科学と相容れない思い違いをしていたはずです。間違った判断と実践を今こそ反省し、1日も早く改善していく行動を起こすべきでしょう。

 私の意見は今までずっと述べてきました。ブログの始めの言葉は、ほとんどがコロナ禍に関することです。何よりも大切なのは「命」なのだと、改めて言わなければならないほど、社会の情勢は曖昧模糊としたものになりつつあると私は思ってしまい、尋常ではいられません。

 

 さて、私の小説もクライマックスに向かっています。もう少しの間、お付き合い頂ければと思います。

芹沢マリリンでした🎵