No.44「監察医-朝顔」の素直な魅力❗その3

 No.41「松本清張って凄い❗『砂漠の塩』を読む」で、自分で出した宿題、解けたかも?です。宿題は、なぜタイトルが「砂漠の塩」なのか?……ということでした。

 この小説では、よく砂漠を「海」に例えています。緑のオアシスは「陸地」、茶褐色の果てしない砂漠が「海」。そして、オアシスと砂漠の境目が「波打際」、彼らの目的地で、行くことができなかったバグダッドへの一本道が「渚」、バグダッドの街が「港」と表現されています🐪🐪🐫。

 確かに砂漠は迷い込んだら命も飲み込む「海」とも言えます。美しいけれど、限りなく危険でもある。だから惹かれるんですね🏜️。

 真吉と泰子が選んだ「死に場所」、それがバグダッドへの道を外れた砂漠の中でした。あぁ、思い出してまた胸が苦しくなってきます💦。

 そしてそこは、旧約聖書に出てくる、まさしく「エデンの東」。罪深い自分たちには、ふさわしい死に場所とでも思ったのでしょうか…。

 本文から抜粋を紹介します。

【ノドの地(カインが逃れ住んだ場所)がどの辺に比定されているのかもとより分からない。泰子は黄褐色の地平線を見つめ、わが骨の住居をその一点に置いた。】

 

 ならばその「骨」は、白いがゆえに、海(この場合は砂漠)の「塩」とは言えないでしょうか?本来、塩田ででもなければ、「塩」は海の水に溶けて見えなくなってしまうもの。

 彼らは自分たちの骸や骨が、海に溶ける塩のように、砂漠の中に埋もれて土に返り、誰にも発見されずに顧みられることもない、そういう存在になりたかったのではないでしょうか🌊。

 私は2回目を読んでいるのですが、読んでしまうのが惜しくて、まだ半分です。最後まで読んで、また新しい説が出てきたら追って紹介します。

 芹沢マリリンがこんなに夢中になっているなら、読んでみようかと思った人、ラストはあえてお話ししていないので充分楽しめると思います。

 最後の最後、本当にびっくりしますよ🙋そして、きっともう一度読み返したくなるはずです。松本清張って、本当に凄い❗

……………………

 それではまず、「新聞記事から時代を読む」から始めたいと思います。緊急事態宣言発出から2週間以上過ぎました。効果は出ているでしょうか?

 東京五輪は、どうなるのでしょうか?外電では、バイデン大統領は元気でしょうか?

 さて、新聞の見出しを拾ってみましょう!

⭕コロナ関連

▲文化関連

🔵政治情勢

●外電

・その他

1月23日

🔵核兵器禁止条約発効 51ヵ国・地域批准 国連「核なき世界への重要な一歩」と称賛

🔵核兵器 終わりの始まり 禁止条約発効 被爆者希望高まる

⇒日本は批准していません。菅総理は明確に「批准する津守はない」と言いました。世界唯一の戦争被爆国日本は、核爆弾を落とした加害者のアメリカに遠慮して、この体たらくです💥。

 どの国よりも堂々と「核兵器廃絶」を声高らかに言えるはずの国なのに……💧。

 

🔵東京五輪開幕まで半年 英で中止報道 日本政府否定 準備継続も懐疑論拡大

・自殺者11年ぶり増加 20年速報値 2万919人 女性や子ども深刻 「健康問題」「家庭問題」

⇒小中高生の自殺者440人(小学生13人、中学生120人、高校生307人)過去最多のニュースに胸が痛みます。

 世界有数(世界一だという説もあります)の自殺国日本は、本当に生きづらい国なのかもしれません。同調圧力が強く、他と異なることを許さない国。他国にはない(らしい)、子どもの罪は家族の罪という考え方が強い国。そこに、先の見えないコロナが追い討ちをかけました💦!

 「娘にコロナをうつしたかもしれない」と苦にした30代の母親が自殺しています。先行きの見えない仕事に不安を感じて、死を選んだ人もいます。

 文明国日本、清潔で安全な国日本、自殺大国なんて信じられない平和な国日本。……でも、どこかいびつなのでしょう。考えるべき問題だと私は思います。

 

⭕国内コロナ感染者数 5046人

⭕コロナ関連法改正案閣議決定 入院・時短拒否に罰則 来月初旬成立目指す 主な罰則強化

◾一般市民 入院拒否及び逃走→1年以下の懲役または100万円以下の罰金

◾飲食店 時短の命令違反→50万円以下の過料

医療機関や検査機関→協力要請に応じなければ、勧告、公表できる

⭕罰金盛り込み、関連法改正案 「検査忌避につながる」 保健所、医療機関は困惑

⇒「アメなし、ムチのみ」的感が否めないです💥。充分な補償もせず、すぐに検査や入院できる状況も作っていない中で、今まで依拠してきた日本人の良心に対して、手のひらを返すように、日本人の感覚にそぐわない「罰則」で脅すというやり方はどうなんでしょう。

 窓口の保健所への援助はしたのでしょうか。なぜなら保健所の負担がまず更に増えるのが目に見えています。

 コロナ対策を担当する東京都の幹部曰く、「感染経路の調査は、当事者との信頼関係の上に成り立っている。刑事罰をちらつかせるやり方はそぐわない。」……同感🙋。

 

1月24日

▲今どきのシニア女性像 感覚若くシビアで冷静 雑誌の浮沈から探る 元アンノン族おしゃれに関心高く

▲こころの森 「地球アトリエ」始動 アートで未来築くため

●バイデン政権始動 北朝鮮 核「深刻な脅威」東アジア新戦略策定へ

●オースティン氏 国防長官に就任 黒人初

●トランプ氏弾劾裁判 来月9日開始与野党が合意

●中国の旅サイト ウイグル族の利用拒否か 香港、台湾人も

⭕国内コロナ死者5000人超 半月で1000人増ペース加速 死者19日100人超

⭕●英の変異種、死亡率高い恐れ 60代男性1000人中、従来型10人感染、変異型13~14人感染の可能性

⭕ワクチン一般接種5月にも

【ワクチン接種の想定スケジュール】

2月15日~ワクチン承認

2月~医療従事者1万人(安全性調査)

3月中旬~医療従事者約370万人+高齢者

3月下旬~65歳以上3600万人

5月~一般

「非現実的」自治体反発 医師確保など 準備に四苦八苦

⭕社説 東京五輪まで半年 あらゆる選択肢の検討を

中止、再延期も選択肢から外すべきではない。3月25日に始まる聖火リレー前が見極め時期 政治的思惑は一切排除し、判断を下さなければならない

……………………

 それでは、今日がこのテーマもラストですね🙋。「監察医-朝顔」の素直な魅力の締めくくりをお話させていただきます😃。骨子と進捗状況は次の通りです。

 

1,なぜ今「監察医-朝顔」に注目したのか⁉️→前々回で済み

 

2,キャストがいい❗→前々回で済み

3,夫婦の関係がいい❗→前回で済み

4,ロケ地がいい❗→前回で済み

5,「東日本大震災」への思いが、ずっとベースに流れているのがいい❗→前回で済み

6,テーマがいい❗→今回はこれだけが残っています!

 

6,テーマがいい❗

 このドラマには、現在社会で問題になっている情勢が織り込まれています。それがまた、このドラマが胸を打つ要因のひとつになっていると思います。

 最近の回で、織り込まれていた社会へのメッセージをいくつか紹介して、私のお話を締めくくりたいと思います🙋。

 

◆日本での警察官が銃を発砲することの意味

 私が大好きなアメリカのサスペンスドラマでは、科学捜査班と警察官の境がありません。実際には明確に区別されてるそうですが、ドラマの特性でそうなっているらしく、よく発砲します💥。

 CSIマイアミのBOSSホレイショ・ケインなんて、やたら撃ちますから(笑)。まぁ、銃を持ってますからね、一般人が。

 私は教師をしていた時、AETのアメリカ人の先生と、よくアメリカのサスペンスドラマの話をしていました。

アメリカではどれくらいの人が銃を保持してるの?」と聞くと、彼はニヤッと笑って、「どれくらいの割合だと思いますか?🇺🇸」と質問を返してきました。

 「半分より多いぐらい。60%かな?いや、子どもは持っていないから、28%かな!」と言うと、彼(ゲヴィン)は、またまたニヤッと笑って、「全国民の3%です。僕も持っていません。🇺🇸」と答えたので驚きました。

 現在は、18歳以上だと30%にはね上がりますが、私の先入観よりずっと少なかったのです。嫌ですよね。銃持つのなんて……。

 

 さて、日本ではもちろん一般人は銃を持っていませんし、携帯している警察官でも、銃の取り扱いはかなり厳しいルールのもと管理されています。

 そこに、桑原君の発砲事件が起こりました。もちろん、警察官として何の落ち度もなく、身を守るためにやむなく発砲したわけで、彼が上司から叱責されるいわれは全くないのですが、それでも発砲の経過をかなり厳しく問い詰められ、暗に自主降格まで匂わされました💥。(ホレイショなら何回も免職だな(笑))

 

 結局、彼は自身の主張を曲げませんでしたが、しばらくの間、転勤となり、刑事ではなく交番勤務とされ、単身赴任を余儀なくされました。

 私はアメリカのドラマを見すぎて、日本での銃の発砲の重大性を忘れていました💦。改めて、人の命を一瞬にして奪う銃の恐ろしさと、その銃を扱う仕事の重大性を感じたのです。

 最近、警察官がコンビニのトイレに銃と手錠を置き忘れるという事件があったそうですが、言語道断ですね!前にもあったらしいって、そんなこと😱!

 桑原くんが、上司に詰問されたとき言った「私には家族がいます。家族のために死ぬわけにはいかないのです!」という言葉は胸に沁みました❗

 

◆ネットの危険性

 犯人と間違われた若者が、マスコミに追いかけられたり、ネットで誹謗中傷され、顔も名前もプライバシーも晒されて、それを苦にして自殺する……という、最近ありがちな事件を扱う回がありました。

 更に、結局は無実だったにもかかわらず、あろうことか監察医研修生の大学生が、彼の遺体の写真をラボのコンピューターからコピーし、またあろうことかそれをネットに晒す……という、酷い事件に発展してしまいました❗

 ネットの恐ろしさはもちろんですが、研修生のやったことは、浅はかな正義感(亡くなった女性のかたきうち?)からの、全く情状酌量し得ない、重大犯罪だと私は思いました。

 無実にもかかわらず、自殺に追い込まれ、さらに遺体をネットに晒されるなんて、たとえどんなに悪人であっても断じて許されることじゃないでしょう❗

 その人の親や兄弟の気持ちを考えるとたまらない気持ちになりました。だから、その研修生は残念だけどクビだな、もう監察医への道は閉ざされたな、可哀想だけど自業自得だな……と私は思って疑いませんでした。

 

 ところが💥、信じられないことに、彼は優しく叱責されて泣いただけで、まだラボに居ることが許されてしまいます。朝顔に「いてほしい」まで言わせて。

 脚本家の方、スタッフの皆さん、それでいいんですか?私は理解に苦しみます。役者さんには悪いですが、次の回で、彼の顔を見た時、複雑な思いがしました。

 

感染症

 遺体であっても、感染症は心配ですよね。大昔、AIDSのことが知られ始めた頃、医師や看護師が、罹患者の血液が入った注射針を誤って自分の指とかに刺してしまい、AIDSに感染するという痛ましい内容のドラマがたくさん放映されました。💉

 私の身内には医療従事者が多いので、現在のコロナ禍の勤務もとても心配しています。気をつけていても、失敗してしまうことはありますから。そういう危険の中で、日々医療従事者の方々はがんばってくださっているんだと思うと頭が下がります。

 幸運にも、メスで直にあれだけ大きく切って出血していたら、実際にはかなりヤバいはずです。注射針で突いただけでも感染する場合があるんですよ!

 また狂犬病という設定があまりに残酷!私でも狂犬病を発症したら100%助からないことを知っています。光子さんの傷は、もう少し小さいものにした方が、現実味があったのではないかと、私は思います。

 とにかく、医療従事者の方々をこれ以上疲れさせないよう、国は早く手を打ってほしいと、改めて思いました🌺。

 

風評被害

 これがまた厄介な問題なんですよね!このドラマは、その被害者を天使のような5歳のつぐみちゃんにすることで、多くの視聴者の胸をうち心に残すことに成功しました🙆。

 「ママが感染症を扱う仕事をしているから、つぐみちゃんのおまんじゅうはいらない!」……そう言われたつぐみちゃんは家で泣いてしまいます💧。

 しかし、たった5歳なのに、つぐみちゃんは何が間違いなのかをはっきり知っているのです!悪いのは、そんな根拠のないことでいじめるお友達(家でそのようなことをしゃべっている親)であり、その間違いを正してくれない保育士さんであり、ママはちっとも悪くないことをわかっているのです❗

 私は号泣😭😭😭💦しました❗可愛いだけじゃないつぐみちゃんの賢さと、そういう親子関係を築いている朝顔たちに感動したんです❗

 コロナ禍の社会で、訳のわからない風評を撒き散らす人は、本当に情けない!それが大人なら、絶対に許せない!……と強く感じた私でした。

 

 最後に、朝顔が遺体を解剖するときに必ず言う「教えてください。お願いします。」について考えました。意味は明確なので省略します。

 私はこれは監察医として、医師としての朝顔が、自分への戒めとして呟いているのではないかと思っています。

 確かに、医者は優秀であり、人から感謝され、時には神様のように崇められます。もちろん、本当に優秀じゃないと医者にはなれないし、命を救ってくれる仕事をしている人は、確かに神様のように思われて当たり前です。

 しかし、朝顔のような人でも、その自信と(もちろん実績に裏付けられていますが)、経験から、時として傲慢になったり、経験主義に陥ったり、先入観を持ってしまったりして、正確な検死ができなかったことがあったのではないでしょうか。

 だから、そうならないために、あくまでも「遺体から謙虚に教えてもらう」という姿勢を大切にすることを自分に言い聞かせているように思うのです🌼。

 私は長年教師をしていたので、人から先生と呼ばれました。若いときは、実力もないのに怖いもの知らずな変な勇気だけはあって、偉そうに生徒たちに節していたように思います。

 実力がまだないことを知っているために虚勢を張っていたのかもしれません。校内暴力荒れ狂う時代でしたから。

 40代手前で、ある本📕でひとつの詩を読み、考え方が変わり始めました。だいたいの内容は次のようなものでした。

【教師は削井(さくせい)者である。子どもたちはそれぞれの心の中に宝物を持っている。教師はそれが地上に噴き出せるよう道をつけなければならない。正しい道さえつければ、子どもたちは宝物を自然に噴き出してくるのである。教師は、子どもたちのどこに宝物が埋まっているかを察知し、正しい道をつけてやらねばならない。】

 目からウロコが落ちました。

 偉そうに、「教えてやる」的な考えを持っていたことを恥じるようになりました。生徒たちがもし授業の内容を理解できないとしたら、道の付け方が悪いのだと考えるようになりました。📒✏️

 そう考えを変えると、生徒たちから保護者から教えられることのなんと多様で豊富なことか🌈。

 教師を退職してすぐ出版した「(若い)先生たちへの応援BOOK」は一貫してそういう思いで書きました。自分の本📘の宣伝で恐縮ですが、教育関係で興味のある方はネットで検索してみてください(笑)😃。

 

 朝顔の検死解剖前のこの儀式は、他の監察医にとっては、実際はちょっと戸惑いますよね。自分も言った方がいいだろうか、いや、言わない方がいいだろうか…、と普通思ってしまうものです。

 ところが、それらの迷いを感じさせないほど、ここの職場は、このチームは温かいのです。朝顔は他の監察医にもちろん強制したりしません。他の監察医も無理に真似したり、どうしようかと悩んだりしません🌻。

 それぞれがそれぞれのやり方で仕事をすることを認めあっているし、この儀式をしようがしまいが、チームとして信頼し合っているので言葉は必要ないのです🌷。

 だから朝顔は、自分が主になって検死解剖するときは、何の躊躇もなく「教えてください。お願いします。」が言えるのだと私は思います🙋。

 

 さて、「監察医-朝顔」は明日月曜日です。見なくっちゃ❗(笑) 芹沢マリリンでした🎵