No.76実は私、小説も書いてます❗その11

 オリンピックが始まりました!アスリートたちの勇姿は、結果がどうであれ無条件に感動を呼びます😃。

 それにしても、アスリートたちの努力に比べ、オリンピック委員会と日本政府の失策には、ほとほと呆れてしまいます。・・というより疲れました😥。

 昨日TVの報道特集で、オリンピックのボランティア用のお弁当の大量廃棄のニュースには驚いて胸が潰れる思いです😰。

 私は、もちろんマスコミの報道を鵜呑みにしている訳でも、何がなんでもオリンピック反対と思い込んでいる訳でもありませんが、(軟らか目)に見ても、このニュースには驚き、怒りさえ覚えてしまいました💦。

 東京の無観客になった国立競技場に、大型トラックで大量のお弁当やおにぎりが搬入されます。しかし、無観客のためボランティアの人数は大幅に削減され、余った食品が大量に、人の手に渡ることなく即刻ゴミ箱に廃棄されているのです!

 確かに発注した食品は急にはキャンセルできません。キャンセルしたら、その業者が損害を被ってしまいます。🍱🍙🍱🍙🍱🍙🍱🍙🍱🍙🍱🍙🍱🍙🍱🍙

 しかし、廃棄しか処分方法はなかったのでしょうか・・。コロナの影響とかで、食事に困っている人は大勢いるでしょう。アルバイトができずに、高い学費に困窮している大学生や、失職して住む家もなくなり路上生活を余儀なくされている人たちもいるようです。

 捨てるのなら、施設や子ども食堂やそういう人たちに無償で配ったらどうでしょう?もちろん配るのにも人員が必要で場所も必要ですが、練れない対策でもないように私は思うのです。

 自分が動かずして簡単にそんなことを言うな・・と言われるかもしれませんが、そういう仕事や役割を委託するために、私たちは長い間高額の税金を払っているのです。

 無観客になる場合、ならない場合の二つの場合を想定して、ボランティアの人数を考え、お弁当の数も割り出し、余る食品の行く手をあらかじめ考えておく。

 配布に関しては、無観客でボランティアの仕事がなくなる方々に、あらかじめ依頼しておく・・というのはどうでしょう?

 私でもこれぐらいのことは想像ができます。賢い有能な方々がオリンピック委員会にも政府にも山ほどおられるはずですから、私ごときが思いつくことは考えられるでしょう。

 いったい誰がそこにブレーキをかけたんですか?意味がわかりません😥。

 

 思えば、なぜ⁉️・・と思うことがたくさんあります。

・エンブレムの盗作疑惑

・国立競技場の設計変更問題

・マラソンコースが東京から札幌へ

・大会組織委員会森喜朗会長の女性差別発言とそれによる辞任

・先走った森会長推薦の川淵三郎氏の辞任

・開閉会式の総合統括担当の女性タレントの容姿を侮辱する発言

聖火ランナーの相次ぐ辞退

・大会ボランティアへの待遇の悪さ

・直前の開会式の関係者の辞任と解任(大会組織委員会は、中心スタッフについてなんにも検索しないんでしょうか…。理念に照らし合わせれば事前にチェックは可能だと思うんですが…。)

💦💦💦💦💦

 確かに誰もが予想しないコロナ禍での開催で、余分な仕事が限りなく増えたであろうことは予想するに固くありません。

 しかし、政府のコロナ対策の遅さと不備が、その混乱に拍車をかけたように私は思います😓。

・ボランティアへのワクチン接種の遅れ

(これには、政府の見通しのなさによる全国へのワクチン配布の遅れが大きく影響しているのでしょう)

・バブル方式と言いながら、穴だらけのバブルだったことが判明

(空港での水際対策の甘さ、ホテルでの管理やホテルからの外出に関する不徹底など)

・子どもたちの観戦動員の問題

・交通渋滞の問題

・開会式の時の国立競技場の周りの密状態の放任?

そして、

・開催地東京での4回目の緊急事態宣言と医療現場の逼迫

・長引く緊急事態宣言や蔓延防止対策による経済の冷え込み

・・・など、枚挙にいとまがありません😰。

 何でも企画をする時は、第1案がダメな時、緊急に予想外のことが起こった時の代替案をいくつも用意するものです。見通しとセキュリティーが不可欠です。

 そして、まず大切なのが、「なぜやるのか。何のためにやるのか。到達目標は何か。」という、『理論』です❗私はそう思っています。

 その『理論』や『理念』を大切にしないことから、先程のべた辞任や解任が起こってくるのではないかと思うのです。

 開会式のコンセプトを前日に新聞やニュースで見て私は真剣にびっくりしました!確か一番の目的は、『復興五輪』ですよね❗その記述が一つもありませんでした!全く一言もです💦。

 そんなことあり得ないでしょう💦。何のために上野由岐子さん始めソフトボールのチームが福島で試合をしたんですか…。

 それに対してコロナ禍からの復活とかを付け加えるということはアリだと思いますが、全く言及しないなんて考えられません(さすがに橋本さんも驚いていましたね。・・というよりあなたは事前にチェックしておくべきでしょう)。

 そこが曖昧になるということは、今回の五輪の意義そのものに関わる重大事項だと思いますが、あなたはどう思われますか・・?

🎾🏊⚽️⚾️🏀🏃🏃🏃🏃

 

 それでは、今回も私の小説でしばし非日常をお楽しみください🙋。

  「刹那~襟子」 第3章 『叙情的恋愛』続き

 繭子たちは、とうとう離れることができなくなった。愛しすぎて、相手が自分の身体の一部になってしまい、切り離すことができなくなってしまった。

 彼らは去った。何もかも捨てて・・。

 もちろん許されることではない。残された夫や褄や子どもたちのことを思えば、地獄に堕ちてしかるべき所業である。その大きな犠牲を顧みず彼らは去った。

 彼らは出会ってしまったのだ。全てを捨てても後悔しない相手に。きっと繭子があのカフェで言っていたように、それは互いの視線が一瞬にして網膜に像を結んでしまったことから始まったのだ。

 その一瞬が、彼らの人生のベクトルを変えてしまった。何度も引き戻そうとしただろうに、偶然に偶然が絡み合い、重なり合い、交錯する刹那の運命の糸に引き寄せられてしまったのだろう。

 襟子は、夕日の残光がゆらゆらとビルの谷間に消えて行くのを瞳の端に感じながら、車のスタートボタンを押した。

 オートに設定したライトがためらいがちに点灯するのに気づき、間もなく迫る宵闇との間のこの時間が、まさしく文字通り「逢魔が時」であることに微かな違和感を覚えていた。

 街路樹のわずかに色づいた木の葉が一枚、襟子の車のフロントグラスに落ちてきて、しばらくワイパーの片隅に踊っていたが、いつの間にか何処かへとひらめきながら飛んでいってしまった・・。

🍂🍂🍂🍂🍂🍂🍂

 

 白い霧の中を走って走って、繭子はようやく愛しい人の病室を探し当てた。病室のドアのプレートに触れると、花の写真はおもむろに一人の名前を写し出した。紛れもないあの人の名前・・。

 繭子は、ためらいながらも決然とドアノブに手をかけた。物音一つしない。人工呼吸器のシューシューという音も、何かの機械の電子音も、そして当然あるはずの小さな話し声や人の気配も、そこにはないように思えた。

 繭子は意を決してドアを開けた。するすると音もなくドアは開き、白い布団にくるまれて横たわる人の姿が見えた。あぁ、紛れもなくそれは繭子の愛しい人。

 白いベッド、白いシーツ、そして見たこともないほど白い顔をした彼が、静かに眠っていた。繭子は、自分を拒否しているはずのこの部屋に入ることを躊躇し、次の瞬間にも聞こえて来そうな彼の妻や子どもたちの声を聞き逃すまいと全神経を研ぎ澄ませた。

 その時までは、繭子はかろうじて冷静だった。その時までは・・。

 彼の他には誰もいない。そして、この期を逃したら、きっと二度と逢えなくなる・・。ふと、彼の眉間が微かに苦痛に歪んだ。まるで、繭子の下にいる、あの時に見せる快楽と苦痛の狭間のような表情だ。

 繭子は我慢ができなかった。彼の家族に見られるかもしれないことや、その他諸々の世俗の常識はもはやどうでもよくなった。

 吸い寄せられるようにベッドの傍に駆け寄って、血の気のなくなった彼の手を握りしめた。繭子をいつも癒してくれたこの優しい手に、何度も何度も口づけし、自分の頬に押し当てた。

 ひんやりと冷たいが、微かにそこに温かみのあるその手を、自分の唇に頬にそして胸に押し当て続けた・・。

 

 自分の嗚咽で目を覚ました繭子は、枕が涙で濡れているのを、何処か遠くのことのように感じていた。また、辛い夢を見てしまった。

 繭子は、今まで彼の夢を見ることはほとんどなかった。おそらく死の床にいる彼のことを、まるで予知夢のように見るとは、我ながら自分の精神のバランスの危うさを感じて慄然としたのだった。

 繭子にとって辛い夢とは、いつも決まって高校生の頃の夢だ。朝目覚めたら、もうとっくに電車の時間は過ぎている。父や母は仕事に出かけて家には誰もいない。

 遅刻してでも駅に向かおうとするが、制服がない。やっと制服が見つかると今度は鞄がない。靴がない。どうしても学校に行けないのだ。

 辛くて悔しくて不安で、繭子は涙を流し始める。少女のようにしゃくりあげながら・・。そういう夢を見たとき、繭子はいつも、

「大丈夫、大丈夫・・。」

と呪文のように小声で繰り返しながら、自分の腕で自分の身体を抱き締める。爪の痕が付くくらいきつく抱き締めると、不思議と落ち着いたものだ。

 今、繭子は彼と借りた、自分と彼の他には誰も知らない隠れ家のような小さな部屋にいる。仕事が終わって。いつものように互いに連絡もとらず、1ヶ月前に二人で決めた日の決めた時間に二人は部屋で落ち合った。

 もどかしげに互いに着ているものを剥ぎ取り合い、ほんのつかの間の情事で互いの気持ちを確かめ合って、限られた、短いけれど心地よい眠りに身を委ねていたのだった。

 (まだもう少し時間がある・・。)

隣でまだ寝息をたてている彼を起こさないように、静かに布団から抜け出て。繭子は音をたてないように服を着る。

 唇に喉に彼の匂いを感じる。繭子は、小さなシンクの水道の蛇口から、ガラスのコップになみなみと水を注ぎ、喉を鳴らして飲み干した。

🌇🌆🌃🌌🌕🌔🌓🌑

 

 繭子と彼の関係は、どちらかが病気になった時のことを考えると風前の灯火のようなものだ。互いの配偶者画二人の関係を知ったとしたら、たとえ臨終だといっても、繭子を彼に逢わせてくれるはずがない。

 彼も同じだ。どちらかが病気になって身動きがとれなくなった時、二人にはなす術もなく時は流れていくだろう。そんな時のことを考えると、繭子は無性に淋しくなる。

 一番大事なときに、一番一緒にいたい時に、決して一緒にはいられないのが二人の関係だからだ。あの夢は、そんな恐怖心から繭子の深層心理に巣くっている光景なのだろう。

 繭子は彼と抜き差しならぬ関係になって一年ほど経った時、彼の胸の上で寝物語に呟いたことがある。

「私かあなたか、どちらかが余命幾ばくもないという病気になった時は、二人で何処かへ行こう。最期にはそれぞれの家族の元に帰るのか帰らないのか、それも成り行きに任せよう。

束の間の贅沢な二人だけの時間を大切に過ごそう。絶対に後悔しないように。誰にもわかってもらえないし、誰にも許してもらえないでしょうけど。」

 ほんの1%の可能性でも、本当に実現するかもしれないと錯覚する瞬間が、二人にはどうしても必要だったのだ。

 

 いつの間にか彼が起きて、繭子に背を向けて身支度をしている。繭子は、ネクタイを背中の方に回し、襟を立てて締める彼の仕草が好きだ。

 帰るまで二人はほとんど言葉を交わさない。が、この日は違った。

「限界だな・・。」

「そうね・・。」

「何処かへ行こうか・・。」

「わかった・・。」

その、あまりにも意味の深い、短い言葉のやり取りが、彼らのその後を決めた。期は熟していたのだ。それ以上の言葉はいらなかった。

🌇🌆🌃🌌✨🎇

 

 今回は、ここまでにさせていただきます。今回のラストは第4章「濃厚接種」に入るかなぁと思っていたのですが、第3章「叙情的恋愛」がもうあと少し残っていました。

 小説を書いていると、どうしてもラブストーリーを入れたくなるのです(照れ笑)。

 続きも読んでくださいね😃。皆様、熱中症にはお気をつけくださいませ☺️ 芹沢マリリンでした🎵

 

 

 

No.75実は私、小説も書いてます❗その10 

 京都府立植物園で28年間も育ててきた世界最大の花ショクダイオウコンニャクの巨大な花が咲きました❗この植物のことは少女の頃から知っていて、とても興味を持っていたので、2メートルもの花が咲く様子を動画で見て、一人興奮していました😆。

 残念ながら2日しか咲かないので見に行けませんが、強烈な腐敗臭がするらしく、マレーシアでドリアンの大人食いをする私ゆえに、ちょっと嗅いでみたかったなぁとも思います(笑)😁。

 実は私は「食虫植物」も大好きで(笑)、植物園の温室でウツボカズラモウセンゴケなどを見つけると、家族で一人、夢中で写真を撮ったものです!なかなか理解してもらえないので(笑)😅。

 以前CO・OPの通販でハエトリソウを購入し、蝿を採るのは難しいので、代わりに竹輪を小さく切ったものをエサとして与えて育てていました(笑)❗

 1ヶ月ほどで枯れてしまったのですが、その理由がさっきわかりました!

 今私は、NHKBSプレミアムで8Kの「イングリッシュガーデン」の番組を観ています。(こういう番組を好んで観るほど、植物が好きです❗ただし、育てるのは苦手です(笑)。) 

 その番組で言っていました。「ハエトリソウは、1回口を閉じると、2日かかって開ける」と。

 そうです!私はハエトリソウで遊び過ぎました💦。口を開け閉めするのが面白くて、何度も触ってしまったからです。ハエトリソウさんごめんなさい😭。

 

🍀🌱🌿🌵🌴🌵🌵🌵🌵🌵

  今回も、私の小説「刹那~襟子」でお楽しみいただければ嬉しいです😆🎵🎵。

   「刹那~襟子」 第三章 『叙情的恋愛』続き

 そして、遠からず彼らは失敗する。襟子は、彼らが決して悪い人間ではないことを知っているだけに、運命な抗えず流されていく二人のこれからを思うと胸が詰まった。

 しかし、襟子は思わずにいられなかった。社会的地位も分別もあるはずの四十代の二人に、ブレーキをかけるチャンスはなかったのだろうかと。

 その後のことを考え、互いの家族のことに思いを巡らせ、世間への影響を考えて思いとどまることはできなかったのだろうか。

 双方にきちんと話し、法的にきちんと離婚し、責任を取るというプロセスを踏むことだってできたはずである。

 しかし、その考えがもはや無為なものであることも彼女にはわかっていた。・・それができるなら、こんなことにはならなかった。

 できなかったのだ。もう片時も離れているとこができなかったのだ。その些末?な一連の手続きの時間さえ、離れたくなかったのだ。

 寧ろ、破滅に向かって一気に流されていくことを自覚しながら、確信犯然として彼らは決行したのだ。こうするしかなかったのではないのだ。

 

 答えの出るはずのない問いを繰り返し、それでも襟子は荷物をまとめ始めた。捨てるものは小さなペーパーバッグ一つ分しかなく、ほんの少しの荷物は、瞬く間に部屋の外の通路へと片付けられた。

 間もなくリサイクル業者が全ての痕跡を運び去ってくれるだろう。襟子は、この場面には不似合いな、真っ赤に燃える鮮やかな夕焼けを背にしながら、しかし心のどこかで、そんな彼らを寧ろ羨ましいとさえ思ってしまう自分がいることを、はっきりと感じていた。

🌇🌇🌆🌆🌌🌌

 恋愛とは、人を愛するとはどういうことなのだろう。そして、不倫とは・・。全てを片付けて帰る道すがら、襟子はしばし考え込んでしまう。

 独身者同士が知り合って恋に落ち、周りの人たちに祝福されて結婚する。しばらくすると子どもが生まれ、子育てをしながら社会的にもごく常識的な地位を得て、いずれ安定した老後を迎える。

 ・・これがよくあるごく普通の人生の道筋であろう。ところが、それ以外の恋愛は、どんなものでも、ひっくるめてまとめて不倫と呼ばれ、倫理的に許されない行為として社会的制裁を受ける。

 例えば、何かの拍子に夫が若い独身女性に心を奪われる場合がある。また、独身女性が、経済力のある、同年代よりも落ち着いた既婚男性に好意を持つことが起こる場合もある。

 女性の場合は、何も要求せずにそのまま陰の存在に甘んじる場合もないではない。しかし、よくあるのは、相手の男性に、妻と別れて一緒になってくれと迫る場合だ。

 若ければそれだけでも自信があるし、自分の将来も長いから、人生をやり直させることに積極的になってしまう。修羅場を見る不倫は、ほとんどがこのケースだと言えるかもしれない。

「もう少し早く出逢っていたら・・。」

という呪文のような言葉があるが、きっとその時でなければ恋には落ちていない。避けられない運命的な出逢いというのは、代わりがきかないのだ。

 

 逆に、妻が別の男性に恋心を持つ場合もあり得る。配偶者以外に恋愛感情を持つのは男性とは限らないのだ。働く女性であろうが専業主婦であろうが、そんなことは関係ない。

 世間一般がその可能性に敢えて言及しないでいるのではないか、避けているのではないかとさえ思えるほど、この範疇の片隅に置かれているのがこのケースであろう。

 この場合は特に、相手は未婚既婚にかかわらず、年上でも年下でもあり得る。相手の男性が、独占しようとする場合もあるだろう。それとも、また深く、密かに浸潤していくのだろうか。

 

 また不倫に走る既婚者は、配偶者に物足りなさや共感できない精神的不満を感じているからだとしたり顔で言う人がいる。

 更にDVや常人には理解しえない言動を執るひどい配偶者ゆえに、他の人へ気持ちが移るのだと言う人もいる。果たしてそういう場合だけなのだろうか・・。

 襟子は、繭子から夫の人格や性格や日常の行動を非難する言葉さえ、一言も聞いたことがない。寧ろ彼女からことあるごとに何度も聞かされていた。

「夫には何も悪いところはないし、何の文句もあり得ない。人間的に信頼しているし、夫として変わらず愛している。」

と。どんなに配偶者を愛していてもある一瞬のそれこそ「逢魔が時」に魑魅魍魎にみ魅入られるように、別の人間に奪われる心を取り戻せなくなることは、残念ながらあり得るのだ。

 繭子たちの場合は、その上、互いに何も求めなかった。未来を考えることもなかった。昨日までは・・。

離婚して再婚したいなどと聞いたこともない。

 二人の時間をもっと持ちたいとも、互いを独占したいとも思っていなかったと襟子は断言できる。そう、昨日までは・・。

 本来の繭子たちの恋愛は、相手に何も求めない、未来も考えない、ただ相手の愛だけを欲していた。刹那に交わす互いの愛だけが彼女たちを支えていた。考えようによっては、なんて純粋な愛の形なのだろうと襟子は思ってしまうのだった。純粋な愛が、この世に本当に存在すればであるが・・。

 ごく普通の結婚をする若い独身の二人であってもその心の奥底に、相手の将来性、金銭的な生活の安定、子供の将来性まで考慮に全く入れないという人は、どれだけ存在するだろうか。

 襟子自身も、結婚の折、それらを全く考えなかったとは言いきれない。それは決して悪いことではないはないし、寧ろ常識と言えるかもしれないが、繭子たちの恋愛に比べれば、功利的な比重が大きいと思えてしまうのだ。

 敢えて言う。叙情的とは対極の打算的な恋愛が、世間ではほとんどの割合を占めていると言ったら言い過ぎだろうか。

 襟子は本当のところがわからなくなってしまった。また自分の精神の脆いところが露出していく危険、神経のニューロンの尖端が、じくじくと音を立ててアラートを発出している。

 自らが自らを苛むイメージに翻弄されながらも、襟子は考えざるを得なかった。

 人を愛するとは何なのだろう。言うまでもなく、浮気や体だけの関係は論外である。結婚という形態は維持しつつも、愛のない生活を流れのように続けている人たち、ただ惰性で家庭を営み続ける人たち、配偶者賀この世を去った時に、あなたと生きて幸せだったと言うことができない時間を、ただ過ごして来た人たち、それでも彼らは社会的に非難されることはないのだ。

 繭子たちは、とうとう離れることができなくなった。愛しすぎて、相手が自分の体の一部になってしまい、切り離すことができなくなってしまった。

 彼らは去った。何もかも捨てて・・。

 

🌌🌉🎇✨🌠🌃

 今回は、ここまでにさせてください。次回はいよいよ、第四章「濃厚接触」に進めそうです。

 世間は真夏、今日も猛暑日でした!夏休みに入って、学生たちは部活動の夏の大会を迎えています。どうか熱中症に気をつけて、元気に今までの成果を発揮してほしいと思います😃。

 エアコンを5時間タイマーにしないと眠れません。タイマーが切れると途中で起きてしまい寝不足です。でも、基本的に夏は大好き❗😍。8月生まれの獅子座の芹沢マリリンでした🎵

 

 

 

 

No.74 実は私、小説も書いてます❗その9

 東京の新規感染者が、昨日は1000人を越え、今日は1300人を越えました。ニュースでは、何度か見た不気味なカーブを描いて、危機が迫っているのを感じます🌃。

 乗り越えたはずの韓国や、タイが大変なことになっているようですし、インドネシアもインドとみまごうほどの状況らしいです💦。

 コロナは手強いですね、本当に。マスクの必要のない社会は、いったいいつ来るのでしょうか😓。海外旅行に行ける日は、私の足腰が元気なうちに訪れるのでしょうか・・。

 私の2回目のワクチンは8月1日に接種の予定です。が、多くのワクチン接種を望む人が、政府の不備のために打てない状況が続いています。

 どうしてこんなに上手くいかないのでしょう・・。どこかに状況分析の甘さや誤りがあるのでしょう。立派な方々が、この先進国日本を動かしているはずなのに、信頼できる政府には程遠いように私は思います😥。

 医療逼迫はなんとしても避けてほしいです。もうすぐ始まるオリンピック・パラリンピックを、日本はどうやって乗り越えていくのでしょうか。

 「日本国民」を「中国国民」と言い間違えるような人が会長を務めるIOCと、どうやって手を携えていくのでしょうか・・。今日は疑問符ばかりの文章になってしまいました💦💦。

 

🌆🌇🌌🌃✨

 さて、今回も私の小説の続きをご覧いただきます。非日常を味わってくださいませ😃。

  「刹那~襟子」 第三章 叙情的恋愛

 「彼と逢っている時間より、待っている時間の方が、ずっと幸せ・・。」 

と語る繭子の表情に、きっと何度もあったであろう彼との修羅場が、かすかに影を落とすのを、襟子は見逃さなかった・・。

「これからどうしたいわけでもないの。今のままでいいの。ただ、離れられないの。ひと月にたった1日、数時間彼に逢うために、私は息をしているの・・。」

そう言い切る彼女を、寧ろ羨望と言っていい思いを含む眼差しで見つめながら、襟子は、頷くより他に、どんな言葉も見つけることができなかった。

 

 その会話から一年半が過ぎ、襟子も繭子も部署が変わった。同じオフィスビルではない別の社屋に繭子の部署が移転してからは(繭子は主任として栄転して行った)、彼女からの連絡は二、三度のご機嫌伺いの後、いつの間にか途絶えた。

 襟子は、今まで通り淡々と着実に家事や子育てと仕事を両立させ、間もなく五十の声を聞こうとしていた。

 そんなある日突然、繭子の夫から、彼女がいなくなったと連絡が来たのだ。妻の行方に心当たりはないか?と言う。襟子にとってそれは、全く想定外のことだった。

 あろうことか、不倫相手と出奔したのだと言う。襟子は耳を疑った。

「そんな馬鹿な・・。」

それほどに唐突な、あり得ない、しかし、紛れもない事実だった。

 クールでドライで契約的な不倫・・と思っていた繭子は、夫も子どもも、家も仕事も、日常の生活さえも捨てて何処かに行ってしまい、行方不明になってしまった。

 相手の男性も同様で、ほんの少しの手持ちの金銭と、少しの着替えだけを持って、誰にも何も言わす家を出たらしい。

 思いがけない二人の行動に、襟子は完全にうろたえてしまった。

 更に、なぜ繭子の夫が、襟子に連絡をしてきたのかを聞いた時には、耳を疑うしかなかった。

 実は繭子は相手の男と、別に部屋を借りていたらしく、そこを引き払いに行きたいが、置き手紙の中に

「不躾で失礼なのは承知の上で、どうか襟子さんにお願いしてください。」

と、書いてあったというのだ。

 襟子が驚いたのは、繭子の出奔よりも、彼女の夫が思ったほど取り乱していなかったことだ。遠からず、こんな日が訪れることを予感していたような素振りであった。

 やはり、知っていたのだ。いや、知られたから逃げたのか、そのあたりを確かめる術はない。

 しかし、自分が繭子たちのことをある程度知っていたこと、知っていたが何も行動に移さなかったことが、彼女の夫に知られてしまうことにもなったが、そのことを責める言葉は、ついに一度も彼の口から発せられることはなかった。

 

 襟子は繭子に頼まれたからではなく、今では小学生と中学生になった二人の子どもを置いていかれた彼女の夫のために、その夫に見せないために、1人で出かけていくことにした。

 無論、相手の男の褄はそれどころではないだろう。しかし、その部屋に行かないとは言いきれない。ゆえに、少しでも早くそこを引き払い、全て捨て去り、何も痕跡を残さないようにしたい。

 どちらのためにも、せめて二人の愛の巣を、白日のもとに晒さないようにしなくてはと、その日のうちに襟子は取るものもとりあえず、急いで駆けつけるのだった。

 

 その部屋は、二人の家からは少し離れているが。職場からはさほど遠くない、襟子も何度か通ったことのある道を路地に入り込んだ一画に、ひっそりと存在していた。

 独身者が住むようなワンルームのアパートだ。新しくはないがそう古くもなく、紅い煉瓦の門扉のある小綺麗な建物だった。

 管理人には事情が伝わっていたらしく、すぐに鍵をもらって二階の端のその部屋に入ることができた。

 狭い玄関スペースに靴を脱ぎ、部屋に上がった途端、襟子は一歩も動けなくなってしまった。そこには、紛れもない二人だけの愛し合うためだけの世界が、まるで夢のように、しかし確実に存在していたからである。

 

 およそ、生活感というものを感じられるものはなかった。かろうじてキッチンに、どこにでもあるガラスのコップが二つ並んでいただけだった。

 窓には遮光カーテンもなく、薄いレースの真新しいカーテンがかかっているだけで、外の風景をうっすらと幻のように映し出しているのだった。

 家具という類は何もなく、小さなおもちゃのようなガラステーブルと、小さな冷蔵庫があったが、中には缶ビールが二本入っているだけだった。

 そして、ワンルームの真ん中を占領していたのは、やはり、羽毛の豪華な、しかしシンプルなダークブラウン一色のカバーのかかったダブルサイズの寝具だった。

 

 彼らは、愛し合うため、それだけのためにこの部屋を借りたのだ。新しい生活を始めたいわけでもなければ、居心地のいい部屋にしたいわけでもなかった。

 ただひたすら、愛し合えればそれで良かったのだ。ただひたすら愛し合えれば・・。

 休日の昼間は明るい陽の光の中で。仕事を終えた後なら、互いの家に帰る前のほんのひとときを、この部屋でただ愛し合うためだけに、彼らは上気した顔をしてこの部屋に来たのだ。おそらくは一人ずつ、示し合わせて・・。

 先に来た方は階段を上がって来る愛しい人の足音を、今か今かと待っていただろう。愛する人が玄関を開けた途端、驚喜し駆け寄ったのだろうか。

 それとも、平静を装い、身動きせずじっと見つめ合ったのだろうか。

 そして、必ずやってくる別れの時、どんなにか幸せな、しかし限られた刹那の愛に、彼らは身をよじられるような苦しい思いをしたことだろう。

 それはもう、誰にも止めることなできない、運命的な逢瀬だったに違いない。そして、とうとう彼ら自身にも止められなくなってしまったのだ・・。

 どちらかが帰るのをためらったのか、何かもっと大きな動揺や修羅場があったのか、あるいは全く何事もない平穏のうちに、どちらからということもなく互いに無言でそう決めたのか、襟子には推し量る術はなかった。

 襟子は深く溜め息をついた。彼らはこれからどうするのだろう。いつかは帰って来るのだろうか。滅多なことはしないだろうが、いったい何処に行ってしまったのだろう。

 二人はいつまで一緒にいられるだろうか。二人が全く同じ量の思いの熱量を持ち続けることは果たして可能だろうか。襟子は、彼らの行く末には、普通の常識人として懐疑的にならざるをえなかった。

 非常識な結末を選んでしまった二人は、いつか自らの行動の影響を冷静に捉える時期が来るだろう。そして、遠からず彼らは失敗する。

 襟子は、彼らが決して悪い人間ではないことを知っているだけに、運命に抗えず流されていく二人のこれからを思うと胸が詰まった・・。

 

🎇✨🌠🌌🌃🌆🌇

 今回はここまでにさせていただきます。次回は、繭子の視点からの描写に移ります。

 次の第四章は、タイトルが「濃厚接触」。・・そう、コロナ禍がテーマです。ご期待くださいませ☀️。

芹沢マリリンでした🎵

 

No.73 実は私、小説も書いてます❗その8

 東京に四度目の緊急事態宣言が出ました。飲食店の落胆はいかがばかりかと推察せれます。そんな時に、コロナ対策の中心人物の暴言❗えっ👀⁉️と思っていたら、瞬く間に撤回❗

 もうどうしていいかわからなくなっているのでしょうか💦。何が大切か、軸がぶれているのでしょうか・・。もともとの軸が私たちとは異なっているのでしょうか・・。

 おまけにJOCのバッハ会長は「東京の緊急事態宣言はオリンピックに何の影響があるのか?」と今頃聞く始末・・。耳を疑いますね😓。

 今年の夏、そして秋、冬は、いったいどんな日々になるのでしょう・・。ワクチンも相変わらず、なかなか行き渡らないし・・。

 アスリートを応援したいのは山々ですが、複雑な思いは拭いされません💦。

 

☔️☔️☁️☁️🌈

 今回も、私の小説「刹那~襟子~」第三章『叙情的恋愛』の続きをお楽しみください😄。ようこそ、非日常の世界へ・・。

 

  第三章  叙情的恋愛  続き

 繭子は不倫していた。もう二年目に入っている。相手は取引先の男性で既婚者らしい。繭子も同じく既婚者で、小学生と幼稚園児の二人の子どもがいる。

 世間から見たら決して許されるはずの無い、しかしまた逆によくある話でもあった。その繭子の許されない恋愛が、こんな結末を迎えようとは・・。一年前の襟子にとっては、全く想定外のことであった。

 

 勤務時間が過ぎ、社の玄関で落ち合った二人は、襟子の帰宅に使う最寄り駅に向かって歩き、途中の小さなカフェに入った。

 明るすぎず、暗すぎず、中途半端な時間で客も少なく、それほど小声にしなくても充分に気兼ねなく話をすることができた。

「襟子さん、私、やっぱり間違ってますよね・・。わかってるんです。」

繭子は、ぽつぽつと、そして途中からは饒舌に一気に自らの不倫について語りだした。

「彼を一目見たとき、雷に打たれたみたいだったんです。この歳で一目惚れって、そんなこと信じられます?一瞬で好きになってしまったんです・・。」

 彼との出会いを、繭子はそう表現した。それはそれは爽やかな、こぼれるような笑顔で、彼は名刺を差し出したそうだ。

 相手も初対面のその時の印象が忘れられなかったと、付き合いだしてから聞いたらしい。そのことを、嬉しそうに彼女はまたこぼれんばかりの笑顔で語った。

 それが二年前。彼らはすぐにそういう関係になったわけではなかった。互いの年齢から考えて、既婚者で子どももいるであろうことが当たり前に予想されたからだ。

 彼らは、単なる恋愛体質だったわけではなかった。何度かの仕事上の取引の場面を経て、それとなく互いの家庭について、ぎこちなく情報を交換しあっていたことを、彼女はまるで二十代の若い女性のように語るのだった。

 襟子は、時折うなづいたり、微笑んだりしながら、相づちを打つ以外は黙って彼女を見つめて、テーブルの上で組んだ手の指に顎を載せて、じっと耳を傾けていた。

「襟子さんなら、世間体とか道徳観念とかを振り回さず、話を聞いてくれるんじゃないかと思ったの・・。」

と、彼女は言った。

 不倫をしている女は、それほどに孤独なのだ。目の前にいる、時折瞳をくるりと上に向けてほほを赤らめて語る女性が四十を過ぎた女性であること、そしてそれを聴いている自分が五十目前のまさしく中年女性であることなど忘れ、互いに何十年も前の学生時代に戻ったように感じたのも、しかしそこまでだった。

 

 襟子には、どうにも釈然としないことがあったのだ。繭子は、彼との出会いからしばらくの間の様子に関しては、まるで若者のように嬉々として語っていたが付き合いはじめてからの様子を語る頃には、別人のようにしたり顔になってしまった(ように襟子には感じられた)。不倫は、やはり普通の恋愛ではないのだ。

 付き合いはじめて1年がたった彼女は、言うならばドライに割りきった不倫をしていた。いや、その状態に行き着いた、行き着かねばならなかった・・と言うべきだろうか(その時はそう思えたのだが)。

 襟子は、不倫という許されない恋愛は、その制約があまりにも大きいがゆえに、もっと苦しいものだと思っていた。

 逢いたい時に逢えないのが不倫だ。二人でいるのがどんなに幸せでも誰にも言えず、誰にも見られてはならない、秘密にするしかないのが不倫である。

 逢えない日が続くと淋しくて眠れなくなるような、逢えない時の相手の様子を詮索して、自分で自分の首を絞めるような、そんな切実さはその時の彼女の様子からは微塵も感じられなかった。彼女は言った。

「私たちは、お互い、いわば家庭と恋愛を両立させて上手くやっているの。彼と逢えた日は、ダンナさんにもうんと優しくするわ。彼も私と逢った日は、帰って必ず奥さんに前よりも優しくするって言ってたわ。

ひと月に一回でいいの。それまでの三十日は、その日のためにあると思うようにしてる。いつも逢いたい逢いたいって思ってると辛いから。そんなことは考えない。

電話は週に一回決まった曜日の決まった時間に数分間だけして、普段はメールもしない。もしも電話のことを聞かれても、週に一回ぐらいなんとでも言えるわ。

逢えた時に次の日を決めるから心配ないの。でも、その約束の日は、もう夢中で、何処にも行かず食事もせずに抱き合うわ。

それでいいの。そんな関係なら、・・もしかしたらずっと続けていけるかもしれないもの・・。」

 繭子は襟子に・・というより、自分自身に言い聞かせるように、それでもぎこちない微笑みを絶やさず、一言一言噛みしめるように語ったのだった。

 

 繭子は決して相手に物をねだったり、旅行を望んだり、手を繋いで街を歩きたがるような愛人体質の女ではなかった。

 特別な美人でもなく派手な方でもない。しかし、与えられた仕事は確実にこなし、きちんと責任を果たす、そういう意味では充分魅力的なキャリアウーマンだ。

 もしも部下のせいで仕事に支障が出たりミスが起こっても、部下を説諭はするが、パワハラをしたり陰湿ないじめをすることは皆無だった。

 責任は全て自分がとり、上昇志向はあったと思うが爽やかなほどにこだわらない。仕事ができるのに、幾度か当然の昇進や抜擢が流れても不満を口にすることはなく、自分のやるべきことをきちんとやり通していた。

 そういう彼女を知っているだけに、襟子は彼女のしていることに何も口を挟むことができなかった。世間一般の道理や使い古された常識論をかざす勇気はなく、またその必要も感じていなかった。

 

 二人が繭子の言う、今のような関係を維持するようになるまで、きっと様々な危機や軋轢があったことだろう。きっと何度も電話し、声を聞きたいと思ったにちがいない。

 声を聞けないなら、せめてメールを送りたいと思うのが当然だ。彼とを繋ぐ魔法の小箱のようなスマートフォンを、1日に何度も何度も覗いたことだろう。

 メールに返信があれば驚喜し、なければ落胆し、決して絶対安全とは言えないスマホに再度送るべきか送らずにいるべきか、何度も何度も思い悩んだことだろう。

 逢えたら逢えたで、必ず別れる時間が来る。互いに待っている人がいる身である。帰る前に身支度を整え、右と左に別れるとき、最初からすっきり割りきれるような思いであったはずがない。

 二人とも大人なゆえに泣いたり喚いたりはしなかっただろうが、笑顔で手を振れるようになるまでは身を切られるような思いであったに違いない。

「彼と逢っている時間より、待っている時間の方がずっと幸せ・・。」

と語る繭子の表情に、きっと何度もあったであろう彼との修羅場が、かすかに影を落とすのを襟子は見逃さなかった・・。

 

🌆🌆🌆🌆🌃🌃🌇

 今回は、この辺りにさせていただきます。また次も読んでくださいね。皆様、どうかご自愛ください🍀

芹沢マリリンでした🎵

 

 

 

 

No.72 実は私、小説も書いてます❗その7

 私のワクチン接種の様子からお話ししたいと思います🙋。集団接種会場でしたが、リハーサルが充分にされているようで、非常にスムーズに進み、入場から30分で帰宅することができました!

 ワクチン接種をするか否かははもちろん個人の自由ですが、私はもう何十年もインフルエンザの予防接種を習慣にしていて、年齢や職業を考慮して接種を決めました。

 会場には案内人が何ヵ所にも複数人いて、医療従事者の方も問診する人と実際に接種する人に分けるなど、大勢スタンバイされていました。

 接種後は、少し頭痛と背中にジンマシンが出てかゆみがありましたが、3日目には完璧に通常の状態になりました。免疫が正常に働いている証拠らしいので気になりません。

 モデルナのワクチンなので2回目は4週間後、次は少し服反応が強く出るかもしれませんが、受ける予定です😆🎵。

 その最後のコロナ対策とも思われるワクチンが、なんと足りなくなっているらしいじゃないですか⁉️

 TVCMを何種類も流して、集団接種会場や企業内接種など、どんどん推奨してここまで来たのに、なんと言うことでしょう・・。

 実は私のもとには、3種類ものワクチン接種のお誘いが半月の間に届きました。一つは、ネットで集団接種を予約するもの、もう一つは、市役所から、かかりつけ医に電話で予約せよというもの、そしてもう一つが、今回電話一回で予約できた集団接種会場のものです。

 昨日は4つ目の集団接種案内が来ていました。なんだか変です😓。

 大変な手間だと思うのに、どうしてもっと一つに統一できないのでしょう💦。郵便物の手配だけでも、統一して省略できないものでしょうか。なんて、煩雑なことをやっているのかと思えてなりません💦。

 おまけに今度は必要数を読み間違えて、せっかくの予約が破棄されるとか、もう訳がわかりません😥。地方自治体のワクチン担当の人が政府のやり方にかなり憤っておられましたが、そうだろうなぁと共感できます。

 このワクチンの迷路、いったいいつ抜け出ることができるのでしょうか・・⁉️オリンピックまでにはまず無理でしょうね💦。オリンピックが終わってもまだ終わってないでしょうね・・。

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 今回も、 私の小説「刹那~襟子」の第二章「ホーム」の続きからです。引き続き、非日常の世界へようこそ(笑)🙋。

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 「刹那~襟子」 第二章「ホーム」の続き

 帰宅した襟子は、慎重に服を脱ぎ、飛んだ血しぶきをわずかでも見つけると、丁寧に強力な洗剤で手洗いし、洗濯機に入れた。鞄にも靴にも、目に見える痕跡はなかったが何度も何度もアルコールで拭いた。

 それが終わると襟子はシャワーを浴びにバスルームに入る。そして勢いよく目を閉じたまま頭から水を被った。その時だった。

 またあの生臭い血の匂いが足下から立ち上る。恐る恐る目を開けた襟子が見たものは、湯気の中で排水溝に向かって渦を巻いて吸い込まれていく、赤黒い血の筋だった。

 襟子は、今まで気づかなかった。自分の長い髪の毛の頭頂部から後ろにかけて、自分もあの若者のように血を浴びていたのを。

 そして、あの男性が死んだことが紛れもない事実であり、襟子の髪の毛から流れ出た血が通っていたはずの、あの男性の命はもう無いのだという実感が、確かな物証となって、二度と覆せない現実となって襟子に迫って来た。

 まさしくあの瞬間に一つの命が消えたのである。「死」はやはり近くにあった。自ら望もうが望むまいが、「死」は日常の中にやはりぽっかりと口を開けて、滑り込んでくる獲物を待っているような気がする・・。

 

 次の日の朝刊に、事件の詳細が載っていた。たった三行、時刻と場所と名前の無い死者の性別と年齢・・それだけだった。

 男性が二度自殺を試みたことも、それを止めようとした若い男性がいたことも、その若者が、頭からバケツの水を被ったように全身が血だらけになったことも、一行も一文字も書かれてはいなかった。

 子どもからお年寄りまでが目にする新聞という情報媒体は、パブリックフィルターがかかっているから当然である。特に自殺報道に関しては、自殺の方法や詳しい遺体の状況は報道されない。

 模倣自殺、誘導自殺を防止するためにもその影響を鑑みて、強い報道自粛の対象になっている。自殺は、時に伝染するのだ・・。

 しかし、襟子は今までそれを意識したことがなかった。目に見えないところに真実は隠されているのかもしれない。

 命の瀬戸際で、死んでいく命、それでも生きていく命、それらが絡み合って人間模様を編み出していくのだろう。

 襟子は朝のコーヒーを飲み終えると、玄関の鏡の前で髪の毛に少し触れ、目を大きく見開いて瞳に力が湧くのを感じた。そして、ふと思い立って、いつものサンダル踵の高いパンプスに履き替えて出勤していくのだった。

  

  第三章 「叙情的恋愛」

 「襟子さん、お話しがあるの。」

片桐繭子は、襟子の職場の後輩、歳は8~9歳ほど襟子より若かったはずだ。ショートメールではなく、わざわざ電話をしてきたことに驚きながらも、勤務中の私用電話ゆえ、

「いいわよ、じゃあ退勤時玄関で。」

と簡単に返してスマホを置いた。話の内容は、だいたい予想できたからだ。

 襟子は職場に決まった友人はいない。ランチに行くのを誘い合うぐらいの同僚はいるが、込み入った話をしたり、逆に込み入った話でもないのに連れ立って休憩時間を一緒に過ごすというような友人はいなかった。

 歓送迎会や忘年会などの、社をあげての懇親会には一応出席していたが、二次会に行くどころか、最後まで残ることもなかった。もっとも最近はコロナの影響で、その機会さえも持たれなくなっていたが・・。

 繭子は、そういう襟子を選んでか、なぜか時折近づいてくるのだ。なぜか・・、いや、その理由もうすうすは感づいていた。

 襟子なら、余計な口を挟まず、まずじっくりと話を聞いてくれるであろう。そして、聞いたことを、不用意に人に吹聴することもないだろう。・・きっとそう思われているにちがいない。

 そんな、感情の起伏を表に出さず、冷静でクールだと思われるような雰囲気を自らが醸し出しているのを、襟子は可もなく不可もなく、それこそ冷静に自覚していたからである。

 

 社内の個人情報になど全く興味がなく、ましてや噂話にも同席しない、そんな襟子にも、風の便りで一年ほど前からの繭子の私生活の良からぬ噂が流れてきていた。

 きっとそのことを自分に聞いて欲しいのだ。ただ、安全な聞き役を繭子は欲していたのだろう。誰でもいいから、アドバイスなど要らないから、ただ聞いて欲しい・・そんな時が、人間にはあるものだ。

 繭子は、不倫していた。もう二年目に入っている。相手は取引先の男性で既婚者らしい。繭子も、同じく既婚者で、小学生と幼稚園児の二人の子どもがいる。

 世間から見たら決して許されるはずもない、しかし、また逆によくある話でもあった。その繭子の許されない恋愛が、こんな結末?を迎えようとは・・。一年前の襟子にとっては、全く想定外のことであった。

🍀🍀🍀🌷🍀🍀🍀🍀

 

 今回はここまでにさせてください。さて、「想定外の結末」とは・・。次回も、非日常の世界を楽しんでいただけたら嬉しいです🙋。芹沢マリリンでした🎵

 

No.71 実は私、小説も書いてます❗その6 

 7月文月になりました。私のワクチン接種日が決まりました❗世間ではワクチンが足りなくなって、予約の打ち消し・・とか、「国を信じてごめんなさい。」と首長が住民に謝るとか、ワクチン接種は全く上手くいっているとは言えません。

 もちろん希望者ですが、医療従事者の接種が完了し、65歳以上の高齢者の接種が完了し、介護従事者、学校関係者の接種も進んでいるはずです。

 企業内接種などもどんどん進んでいると思っていました。なのに、なぜこんなことが今頃ニュースになるんでしょう・・。

 どこまでもアンバランスで、無計画。リーダーシップがとれてなくて、何もかも遅い・・。そんな風に思えてなりません。言いっぱなしで悪いですけど・・。

 とにかく世間の、接種したいのにできない状況の肩方には申し訳ないのですが、私はこの週末に大規模接種会場で接種を済ませてきます。

 その様子は、また次回のブログで紹介させて頂きます🙋。

 

 さて、今回も、私の小説「刹那~襟子」の世界で、つかの間の非日常を楽しんで頂けたらと思います。

 「刹那~襟子」 第二章 ホーム 

前回の続きからです。

🚃🚃🚃🚃🚃🚃🚃

 ホームにアナウンスが鳴り響いた。

「特許電車が通過します。黄色のラインまで下がってお気をつけください。」

 語尾をわずかに上げた、

いつも通りの軽快なアナウンスが聞こえ、通過のため速度を落とさない特急電車の振動と風圧が襟子の前髪をかすかに揺らし始めた。・・その時だった。

 今の今までベンチに座ってうつむいていた年配のあの男性が、恐ろしく機敏な動作で立ち上がり、目にも留まらぬ速さでホームを突っ切って駆け出し、線路に向かって飛び込んだのだった。

「あぁっ!」という、傍にいた若い男性の声を聞いたような気がしたが、一瞬遅れて駆け出したその男性は、今度は男性の服の袖しか掴めなかった。

 ガツン!という、重いものが金属に当たったような、妙に存在感のある音を残して、後は特急電車が急ブレーキをかける、胃の腑に響くような擦過音がホーム一面に響き渡った。

 線路と車輪が摩擦して飛ぶ火花を、襟子は見たような気がした。その車輪からの煙とともに焦げ臭いような匂いがホームに立ち込めた。

 と同時に、襟子はその匂いの中に、確かに生臭い大量の匂いを嗅ぎとったのだった。

 あの若い男性はすぐ傍にいた。つまり、線路に飛び込んだ男性は、襟子のすぐ傍から身を投げたのだ…。

「キャア―!」「うわぁー!」

男性の女性の、ありとあらゆる人々の悲鳴が響いた。襟子のすぐ傍にいたあの男性は、飛び込んだ男性の服だけを掴んだように思ったが、そうではなかった。解かんだ腑には中身が残っていた。失われたのは、その頭部だけだった。

 男性は、頭部がもぎ取られた頸動脈からの大量の血を、それこそ頭から被っていたのだ。全身が血だらけだった。顔も手も胸も足元まで、着ていた服は真っ赤にしか見えなかった。文字通り、bucketいっぱいの水を被ったように、彼は全身におびただしい血液を浴びていたのだ。

🌆🌇🌉🌃🌉

 人々はそれに気づいて遠巻きに後ずさったが、襟子は動くことができなかった…。あわただしく駅員が数名駆けてきて、頭部のない死体をシートでくるみ運び出した。

 他の駅員たちは、血だらけの男性に毛布を被せ、駅事務所にでも連れていくのだろうか、小声で声をかけながら、よろよろと足を引きずる彼を支えつつ去って行った。

 また何人かは、ホームで勢いよく水を流しながらホームに溜まった血の跡をデッキブラシで洗い出した。

 駅員の一人が呆然と立ちすくむ襟子の傍にやって来て声をかける。

「大丈夫ですか?顔と服に血が・・。」

その時初めて、襟子は自分も返り血を浴びていることに気づいたのだった。

 駅員は襟子をベンチに(さっきの二人が座っていたのとは別の)座らせ、真っ白いタオルを差し出した。駅員はタオルをどこかで捨てるよう襟子に言い残し、気遣いながらも慌ただしく駅事務所に走っていった。

🎇🎇🎇🌌🌌🌌

 襟子は震えが止まらなかった。タオルを持つ手が心もとないほど揺れていた。そっと顔に当てたが、かすかに赤い斑点が付いただけで、その血の量に少し安堵した。

 服や鞄も見てみたが、気になるような血の痕跡は見当たらなかった。こんな時はアドレナリンが回っているのか、妙に頭は冴え渡っていた。

(とにかく早く家に帰ろう。家に帰ってから考えよう・・。)

 何を考えようとしているのかさえ自分ではわからなかったが、襟子はスマホを取り出して夫に電話で簡単に連絡し、今いる駅までの迎えを頼んだ。

 どうしても、再度並んで電車に乗る勇気は出なかったのである。その時には、ホームは何事もなかったかのように、元の喧騒を取り戻していた。

 襟子は、死んだ男性と話し込んでいた若い男性のことを考えた。毛布にくるまれた彼の顔は色を失っていた。別人のようになってうろたえ、よろよろと去って行った彼のことを考えていた。

 一瞬のことだった。あの刹那、彼が掴んだ服の頼りなさを、彼はいつ忘れることができるのだろう。そして、もしも、もっと話ができていたら、もしも、もっと早く走り出していたら、もしも、もっと強くあの男性を引っ張ることができていたなら、もしも、もしも・・。

 そうやって、責めなくてもいい自分を責め続けるのだろうか。頭から被った大量の血の匂いを、耳に残った頭が飛ぶ瞬間のあの音を、手に残ったあの振動を、彼はいつか本当に忘れることができるのだろうか・・。

🌆🌆🌃🌃🌃

 帰宅した襟子は、慎重に服を脱ぎ、飛んだ血しぶきをわずかでも見つけると、丁寧に強力な洗剤で手洗いし、洗濯機に入れた。鞄にも靴にも、目に見える痕跡はなかったが何度も何度もアルコールで拭いた。

 それが終わると襟子はシャワーを浴びにバスルームに入る。そして勢いよく目を閉じたまま頭から水着を被った。その時だった。

💦💦💦💦💦

 

 今日はここまでにしたいと思います。間もなく第二章が終わって第三章「叙情的恋愛」に続きます。また別の非日常へともに行きましょう(笑)😊。

芹沢マリリンでした🎵

 

 

No.70 実は私、小説も書いてます❗その5

 昨日、とうとう私にもワクチン予診表が市役所から届きました!勇んでかかりつけ医に電話したところ、「ワクチン接種のご案内」というのが届いてから電話してくださいとのこと😓。

 65歳の夫の時はもっとシンプルに予約ができたらしいですが、私はそうはいかなかったようです😥。夫の場合でも予約してから、1ヵ月後の予約でしたから、私の場合はいつになるかわかりませんね😪。

 最後の頼みの綱のワクチンに人々がどれだけ期待していたかという予想もできていなかったようで、早くもワクチンは品切れ😱。

 大規模接種も企業内接種も、現在予約済み分が終了したら、しばらく中止になってしまいました。政府は、全くどこまで想像力が欠如しているんでしょう💦。

 ワクチンをうちたくても在庫がないんですからどうしようもない💦どうして早急に必要分を手にいれ供給する準備をしていなかったのでしょう⁉️

 他国に輸出するほど確保している国もあるのに、先進国であるはすの日本が、オリンピック、パラリンピックをどうしてもやるといっている日本が、なぜこんな状態なんでしょうか⁉️理解に苦しみます😥。

 今まで、医学の研究分野に国をあげて取り組んで来なかったこと、病院や保健所などの医療機関への国の援助や施作が充分でなかったことのツケでしょうか…。

 未来を展望した政策ではなく、目先の利益の追求ばかり重視してきたからでしょうか…。

 東京の新規感染者がまた微妙に増えてきています。感染力の強い変異株が次々と現れてきています…。明るい兆しの見えるニュースはいつになったら聞けるのでしょうか✨。

 

☔️☔️☔️☔️☔️☔️

 今日は夕方に豪雨になりました。雷も鳴って天候は不安定です。それでは、今回も私の小説「刹那~襟子」にしばらくお付きあいください🙋。

 第二章「ホーム」の続きです。非日常を味わっていただけたら嬉しいです😆🎵🎵。

 

 第二章 「ホーム」前回の続き

 まさかその時、そこに彼が現れようとは、予想も予感もしていなかった襟子は、始め偶然の出会いに小躍りしそうになった。襟子がストローをかむのを止めて、一口冷たいコーヒーを飲み込んだその瞬間だった。

 ラウンジに入ってきた彼と一瞬にして視線が交差したこと微笑もうと襟子の顔の筋肉が動き出す寸前に、それは凍りついたのだった。

 彼は一人ではなかった。彼の優しい左手は、いつも横にいた襟子の腰に自然に添えられていたその左手は(大学生にしては落ち着いたそういう仕草を彼はよくしていた)、隣に寄り添う、襟子も知っている同じ大学の後輩の女の子の細い腰にあった。

 彼は、襟子よりも美人で襟子よりも若く、襟子よりも可愛らしい仕草を自然とできてしまう、あざとい?彼女と二人、どこから見ても楽しそうな、幸せそうな、絵になる恋人同士の図を描いていたのだった。

 襟子が視線をそらしたのと、彼に一瞬遅れて、新しい彼女が襟子に気づくのがほぼ同時だった。実際には見ていないはずなのに、その時の彼女の鋭い視線を、襟子ははっきり感じていた。

 と同時に、彼の方を見て、言葉など要らないとばかり、黙って視線を交わす、優越感に溢れたその瞳の動きまで、襟子は見たような気がした。👀👀👀👀👀

 

 彼らは踵を返し、静かに出ていった。襟子はここが喧騒の中のざわめいた駅のラウンジであることに安堵した。薄暗い落ち着いたレストランや喫茶店だったら、自分はいたたまれなかったことだろう。

 ウェイトレスでさえ気づかないほどの短い時間に、二人はその場から消えていた。襟子の心臓は飛び出そうなほど脈打っていたが、顔も手も胸も、身体中が氷のように冷えきっていた。ただ冷たい汗だけが、その一瞬の出来事の確かな痕跡を残していた。

 

 その後、襟子は、サンダルを履き直すことも忘れ、しばらく動けずにいた。席をたって、またすぐ後にどこかで偶然会うなどという悪魔的な目には死んでも遭いたくなかった。

 しかし、襟子はすぐ後には、何日か落ち込んで泣いたりもしたが、結局彼と彼女がその後どうなったのか知らないまま、詮索することもなかった。意地だった。

 間もなく大学を卒業し、就職してからは振り返って考えたこともない。どちらも若かった。若いカップルにはよくあることだった。

 今となってはほんの少しの痛みこそあれ、その時のように、彼や彼女を憎んだりすることもない。同じラウンジに同じように一人でいても、リラックスした姿勢で居ることができるのだ。時の流れというものは、傷ついた人間にとって、本当に優しい・・。💐

 

 珍しく過去の記憶を振り返りながらも、ゆとりさえ感じられた襟子の身に、1時間後まさかそんなことが起きようとは・・。その時の襟子は、その兆しにさえ気づくはずもなかった。

 ラウンジから出た襟子は、1時間後は自宅までの最寄り駅に向かう電車のホームにいた。まだ夜と言うほど暗くはなっていないが、一様に帰宅する人たちの群れが、いくつものドアを表すラインの後ろに二列の帯をなしていた。

 土曜日の夕暮れ時でもあるので、遊び盛りの若者たちや家族連れも多く、帰宅ラッシュ時のサラリーマンばかりの整然とした無言の統率は取りきれていなかった。

 そのささやかな喧騒が、どことなく柔らかな雰囲気を醸し出してさえいたのである。

 

 快速電車がホームを通過するアナウンスが流れた。この駅には、急行は停まるが快速は停まらない。サラリーマンらしき男性が、一瞬見ていた新聞から顔を上げたが、すぐにまた紙面に目を落とした。その時だった。別の男性の声がホーム中に響いた。 

「おじさん!危ない!」

男性は、もう一人の年配の男性の左腕を掴み(掴めたのは服の袖だけだったかもしれない)、力任せにホームの奥に向かって引き戻した。

 その勢いによろけた年配の男性は、そのまま体勢を立て直せず奥のベンチに崩れるように座りこんだ・・。引き戻した若い方の男性も、その横に座る。

 たいしたざわめきが起こることもなく、周囲の乗客は何が起こったのかを瞬時に悟った。近くの人と小声で話す人もいたが、多くの人たちは無言で、見るともなく二人の男性に視線を絡めたり、その気配を背中に感じているだけだった。

 襟子も、見てはいけないものを見てしまった人のように、並んだ場所を動くことはせず、意識だけを二人の男性に集中させた。

 一目瞭然だった。ふらりと体を線路に投げ出しそうになった年配の男性を、若い方の男性が助けたのだ。線路に飛び込もうとするほどの勢いがあったわけではなかったが、ベンチにうずくまる男性の様子を見ると、やはり自殺しようとしたことに間違いはないようだ。

 危なかった。もう少しで人身事故を目の当たりにするところだった。・・というより、一人の人間が、なんの理由かわからないが、その人生に終止符を打とうとしていたのだ。すぐ近くで。

 「死」はやはり間近にあった。襟子は鼓動が早くなるのを抑えようと、肩にかけていた鞄を胸に抱え直して強く抱きしめた。

 出勤時のニュースで交通情報が流れ、

「○○線□□駅にて、人身事故のため、上下線とも現在運行を中止しています。」

という報道があると、

(誰かがまた電車に飛び込んだのね。死んだ人には悪いけど、こんな時間に迷惑だなぁ…。)

と、一人の人間の命が失われたにもかかわらず、不謹慎にもそう思ってしまう。また、

(リストラかいじめか、きっと大変なことがあったんだろうけど、なにも死ななくてもいいのに…。)

(電車を停めるとすごく多額の賠償金を払わされるらしい。残された人たちが困るだろうなぁ…。)

などと、襟子は傍観者よろしく家族と話したものだった。多くの関係のない人たちはそう思うのではないだろうか。その時の命の価値は、あまりにも軽い・・。

 

 年配の男性は、ベンチに体を折り畳むようにしてうつむいている。隣に座った若い方の男性は、何やら一生懸命小声で話しかけている。

 しかし、年配の男性は聞いているのか聞いていないのか、微動だにしない。若い男性が、ぐっと顔を近づけて必死になって諭そうとしているようにも見える。

 知り合いなのだろうか。もしも、初対面の人だとしたら、なんて思いやり深い人なのだろう。今の世の中、自分のことで精一杯が普通である。なるべくならややこしいことには関わりたくないというのが本音だ。

 襟子は自分よりも若いその男性を尊敬の面持ちで、それとなく経緯をうかがっていた。

 数分が過ぎて、襟子の前に並んでいた人たちは先に来た普通電車に乗り込み、前には誰も並んでいなかった。襟子は次の急行に乗るのだ。

 ホームにアナウンスが鳴り響いた。🚃🚃🚃🚃🚃🚃

………………………

 

 今回はここまでにします。続きは次回に。また読んでくださいね🌆🌆🌆🌆🌆 芹沢マリリンでした🎵